一般社団法人 日本国際医療協力センター

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中国のがん患者治療に力を尽くす2016-02-26 16:29

済陽高穂 西台クリニック院長に聞く

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 がんは21 世紀の人間の三大死因の一つであり、現在の主な治療法は、外科手術、放射線治療、化学療法の3つである。日本は世界一の長寿国であり、医療体制も世界トップクラスだ。最近、日本ではがん克服のための「済陽式食事療法」注目されている。これは東京・西台クリニックの済陽高穂院長による40数年来の研究成果であり、数千人のがん患者によって実効性が証明されている。2014年11月20日、すでに6万人以上がPET/CT検査を受診した西台クリニックを訪ね、「済陽式食事療法」の発案者である済陽院長にお話をうかがった。(聞き手は本誌編集長 蒋豊)

早めの検診が
がん予防の決め手

―― 最近の医療データでは、日本国民の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんによって死亡しています。予防医学の権威、消化器外科の医師として40年間で5000人を超えるがん患者を治療なさっていますが、現在の日本のがん予防、がん治療にはどのような課題がありますか。
済陽 厚生労働省の統計によると、日本では年間で126万9000人が死亡しており、そのうち、がん、心臓病、脳溢血で死亡する人が全体の54%を占めています。中高年に限定するとその比率は70%に達します。
 日本のがん死亡者数は1981年の11万人から現在の33万人へと40年間で3倍に増えました。このスピードは恐ろしいものがあり、大腸がんと乳がんは8倍になりました。胃がんは減りつつあるとはいえ、肺がんは増えこそすれ減っていません。このような情況が生じた主な原因は、現代人の食生活の乱れ、水や土、空気の汚染、さらに検診を受け早期発見早期治療という意識が低いことにあります。
 欧米では、がん検診受診者が7割から8割で、検診によって早期発見されていますが、日本では3割前後にすぎず、中国も日本とほぼ同じです。
 がん患者が増加している一方、100歳の高齢者も毎年6000人ずつ増えており、これは介護を必要とする高齢者が増加し続けていることを意味しています。現在、要介護者は200万人前後ですが、10年後には400万人~500万人になり、700万人~800万人の介護者が必要になります。そうなると、日本の福祉、社会の仕組みはマヒしてしまうでしょう。ですから、がん予防、がん治療という課題と同時に、日本は全面的な長寿、高齢化という大きな課題に直面しているのです。

がん予防と早期診断には
8大原則で

―― 中国には「病は口から入る」ということわざがあり、中国医学は「医食同源」です。先生が近年提唱されているがんに対する食事療法はどのようなものですか。
済陽 現在のがんの6割くらいが悪い食生活によってできたものです。私の「済陽式食事療法」は20年来の研究の成果で、8大原則を唱えています。
(1)1日の食塩摂取量を5グラム以内とする。多すぎると胃液と体の鉱物質のバランスが崩れる。(2)動物性たんぱく質、脂肪の摂取を控え、タマゴ、鶏肉、魚を1日1回食べる。(3)新鮮な野菜、果物を多く食べ免疫力を上げる。(4)胚芽を含む穀類、豆類、芋類の摂取。1日1回豆類と芋類を食べ、1週間に1~2回玄米を食べる。(5)乳酸菌、海藻類、キノコ類を多く摂取する。1日にヨーグルト300グラム、1日1回海藻類とキノコ類を食べることで、基礎免疫力が上がる。(6)ビタミン、クエン酸を豊富に含むレモン、はちみつ、ビール酵母を摂取する。1日にレモン2個、はちみつを大さじ2杯食べる。(7)料理にはオリーブオイルとゴマ油を使う。(8)ミネラルウオーターを多く飲む。
 西台クリニックには年間平均600人以上のがん患者が来院しており、5年間で4000人以上のがん患者をお世話しましたが、「済陽式食事療法」によって6割前後の患者さんの病状が改善・治癒しました。そのうち400人ほどが末期がんで受診されましたが、13%が治癒しました。しかし、たとえ病状が好転しても、以前の悪い食生活に戻るとがんが再発しやすいということに注意しなければなりません。

魚を多く肉を少なく、
無農薬野菜・果物を

―― 2013年には日本の伝統的食文化「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。和食と比べると中国料理は油と塩分が多いのですが、がん予防という点からどのような注意が必要ですか。
済陽 和食、中国料理と地中海系の料理は魚と野菜を多く使うということで、世界の三大ヘルシー料理だといえます。中国料理は油分が比較的多いのですが、主として植物性で、食べ物も植物性のたんぱく質が80%を占めており、動物性たんぱく質は20%にすぎません。これは動物性たんぱく質が80%を占めるアメリカの食生活と正反対です。
 「済陽式食事療法」の8大原則をもとに、中国料理を食べていれば問題ないでしょう。しかし現在は中国の大気汚染と残留農薬問題が心配です。中国の野菜、果物には残留農薬成分が特に多く、もしこれを制限しなければ、がん患者は増え続けるでしょう。自身の健康のために、中国国民は日常の食生活のなかで意識を転換し、無農薬・低農薬栽培の野菜・果物を選ぶように提案したいです。
 21世紀は予防の時代です。予防は治療に勝ります。皆さんには良い食生活の知識と習慣を知っていただきたいと思います。

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難病を治せなければ
本当の医者とはいえない

―― 先生はなぜ医師を志したのですか。医師となる上で影響を受けた人はいらっしゃいますか。
済陽 私の祖父は外科の医師で、私には大変厳しく、いつも「社会に貢献できる人になりなさい」、「難病を治せなければ本当の医者とはいえない」と言われました。
 1970年代、がんにかかるというのは死亡宣告と同じ意味を持っていましたので、私はよく祖父の言葉を思い出し、がんの医者になろうと決心しました。がんの研究室に入り、消化器の病気を中心に仕事をしました。
当時、がんはまだ手術によって切除しきれなかったのですが、10年から20年にわたる医学界の努力によって、手術によってがんを摘出できるようになりました。しかし、再発の防止はできず、当時のがんの再発率は5~6割以上ととても高かったのです。
 1994年、私は荏原病院に勤務し始め、7年間で1400例の消化器がんの切除手術を行いました。そのうち52%の患者さんは術後5年以上生存し、48%の患者さんはがんが再発して亡くなりました。もちろんがんが再発しても5年以上生存した事例もありますが、再発率は5割を超えたのです。がんに対抗する方法を考えなければ、患者さんの医療に対する信頼性が失われ、医療訴訟も起きやすくなります。そこで私は新しいがん予防の方法を模索し始めたのです。
 私の患者さんで、肺がんと肝臓がんで余命数カ月と宣告された方がいらっしゃいました。一人は在宅療養を選択し、1年半でがん細胞がすべて消えました。もう一人も、在宅療養を経てがん細胞がすべて消失しました。私は二人の患者の共通点を見つけました。それは玄米と野菜中心の生活でした。
 またこの時、アメリカの国立衛生研究院のがん研究者リチャード・ドール博士が研究データを発表し、がんの発症原因について50%は飲食に関係し、30%は喫煙に関係しており、食物の消化吸収と代謝異常も大きな要因であるとの結論を導き出しました。私はそれ以降食事療法による抗がんに注目し、研さんを積みました。
 もっとも影響を受けた人は、恩師である中山恒明博士です。先生は大変厳格で、その指導のもとで私は7時半から診察を始め、9時には手術を開始。そして午後6時にカンファレンスを招集し、8時には夜間診療または研究室での討論を始め、ほぼ毎日家に帰るのが夜11時半~12時という生活でした。

年間100人の中国人患者を
受け入れる

―― ここ数年、中国では医療ツーリズムが盛んです。貴クリニックは中国人患者受け入れでは日本屈指の医療施設です。患者への検診や治療において特に注意している点はありますか。
済陽 当クリニックでは年間100人から150人、中国からの医療ツーリズム客を受け入れており、検診とコンサルタントサービスを提供しています。受診者のニーズに基づいて千葉大学附属病院と東京女子医大附属病院で先端医療が受けられるようにご紹介しています。現状、中国の少数の富裕層しか日本での最先端の検診と治療が受けられないことは残念です。
 中国の受診者がもっとも心配していることは言葉の問題です。当クリニックでは医療分野の高いレベルの通訳をコンサルタントと診断に立ち会ってもらいます。通常は一人の受診者に一人の通訳が担当します。

中国から渡ってきた
代々医師の済陽家

―― 先生は医師の末裔であり、また中国人の末裔でもあり、祖先は歴史に名を残した九州島津家の薬師であったと伺っています。中国との関わりについてお話いただけますか。
済陽 済陽家の先祖は中国の山東省出身です。現在、山東省の済南市の近くに済陽という地名もあります。1646年、明末の混乱を避けるため、先祖は済陽から日本に渡ってきて、地名を姓としました。宮崎県都城市には県の史跡に指定された中国の医学者、何欽吉(かきんきつ)の墓もあります。日本の天水、江夏、清水、済陽の4家の先祖はこの何欽吉とともに日本に渡ってきたのです。私の祖先は医術に精通していたので、何欽吉らとともに島津家の医師と薬師になったのです。
 私は戦後の1945年12月に生まれました。戸籍は都城市中町ですが、昔の家は戦争中に焼失したので鷹尾町に引っ越しました。父は毎朝毎晩、家の玄関から遠くの高千穂の山々を見るのが好きでしたので、私が生まれると高穂と名づけたのです。
 中国人の子孫として、私は中国に一種生まれつきの親近感を持っており、がんの予防と治療研究のなかでも常に伝統的な中国医学を学び、参考にしています。私は機会があれば一度中国に行って、原籍地を訪ね、故郷のために貢献したいと思っています。
 医師の末裔として私は祖父の教えを守り、難病を専攻しました。現在、伝統的ながんの三大療法のほか、私が提唱している食事療法も4つ目の治療法であることが証明されてきていることには満足していますが、私はすべての人が健康と長寿を享受し、豊かな晩年を過ごせるようにさらに努力を続けたいと思います。

日中両国はともに
がんに立ち向かうべき

―― 日中両国の医学界は早い段階から各種のルートを通じて学術交流と人材交流が行われています。医療の国際化という観点から、日本と中国の医学交流の重要性をどのように思われますか。
済陽 日中両国は、国情は異なるものの、隣同士の国であり、友好関係を保持すべきで、頻繁な交流を展開することはどの分野においても非常に重要なことです。私は日本の医学界が先端技術を中国に紹介できるよう希望するとともに、中国の医術から学びたいと思っています。
 がんは21世紀の人類の健康を脅かす三大死因の一つであり、中国はもちろん日本でも食習慣を改善する必要があります。さもなければ不治の病が増加し、人びとはますます医師を信用しなくなり、同時に国家は莫大な医療費を負担しなければならなくなります。私は中国と日本が政府から地方自治体まで、医学界から栄養学界まで、官民や各界が手に手をとって、ともにがんなどの難病に対応する方法と対策を討議していくことを願っています。

取材後記
インタビューを終え、済陽院長に恒例の揮毫をお願いすると、「一期一会」と書いてくださった。「一期一会」とは茶道に由来する用語で、一生に一度の機会であるから大切にしなければならないという意味だ。人生は一度、一度の入院が二度とないように、済陽院長は患者のためにがんを根治したいと願うのである。

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                    『人民日報海外版日本月刊』より転載